2017年 10月 05日
Yちゃんの思い出
小学生の同級生だったYちゃんは特に仲の良い友達というわけではなかったが、ひとつ印象的な思い出がある。
5年生くらいだったか、家庭科の授業で刺繍の実習があり、チェーンステッチというものを習った。先生の説明を聞いた後、それぞれが練習用の布に5センチくらい刺繍して提出するのだが、私はわけがわからず途方に暮れていた。
するとYちゃんが近くにやって来て「教えてあげようか?」と言い、とてもわかりやすく具体的に説明してくれた。おかげで私はチェーンステッチのやり方を理解し、無事提出することができ、もう私はチェーンステッチは大丈夫だ、と満足していた。Yちゃんは私にだけでなく、教室中を回っていろいろな子に教えているようだった。
少しして、再びYちゃんが私のところに来た。そして困ったように
「ねえ…チェーンステッチってどうやるの?教えて。」と言う。
「え⁉︎ だってさっき私に教えてくれたじゃん!」
と私は驚いた。
「うん…。私、教えるのは得意なんだけど、自分でやるのは苦手なんだよね…。」
はじめは冗談かと思ったが、Yちゃんの持っている練習用の布に縫い付けられている、チェーンステッチとは程遠いぐにゃぐにゃした糸を見て、それが冗談ではなく、ましてや「教えてあげたんだから私のぶんもやって!」という話でもないことがすぐにわかった。
(ちなみにYちゃんは手が不自由という訳ではない。)
私は呆気にとられながら、Yちゃんの布にYちゃんに教えてもらったチェーンステッチを施して、Yちゃんに返した。Yちゃんは「ありがとう!」と嬉しそうに言ってそれを提出しに行った。
手取り足取りという感じで教えてくれたのに、自分ではできないなんて、そんな事もあるのだなあ・・と、今でも不思議に思う。
Yちゃんどうしているかなぁ。
by nu913
| 2017-10-05 19:58
| 考える事など
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